鯉のぼり

鯉幟を見ることが少なくなりました。以前はマンションのベランダから差し出した幟なども見かけたものですが・・・この時季は案外風が強く(薫風といいます)、はたはたと鳴る幟の音は、初夏を呼び寄せる気がします。

弟は団塊世代でしたが、生まれた時は未だ戦後の物資不足の時代だったので、初節句の鯉幟は父の手作りでした。進駐軍払い下げの落下傘用の布地(ブロード木綿だったかリンネルだったか、畳んで持つと随分重かった)にクレパスで眼や鱗を描き、アイロンをかけて色を定着させました。巨大な真鯉と緋鯉の2匹だったことを憶えています。戦後復興が進むにつれ、子供の日にも誕生日にも、弟の方がいつも豪華なプレゼントを貰うように見えて、羨ましく思っていました。

その弟も、18歳で潰瘍性大腸炎を発症し(当時は殆ど初症例で、治療法も手探りでした)、50代で亡くなりました。看取った年、我が家では白と薄紫のビオラが異常なほど花つきがよく、大きな鉢が花手鞠のようになりました。園芸の好きだった弟からの、あの年限りのメッセージだった、と思うことにしています。