歌留多

 そろそろ年度替わりの準備に忙殺される時期になりつつありますが、今年の我が家の正月を演出してくれた2点をご紹介します。

 まず平野多恵さんの『歌占カード 猫づくし』(夜間飛行 2016/11 絵・遠藤拓人)。神託は和歌の形で伝えられる、その名残で今もおみくじには和歌が書いてある(へたくそな、あやしげな、と思いながらも読むことが多い)。江戸時代に出された歌占の本をもとに、現代風にアレンジしたのがこのカードです。歌占なんて研究対象になるのか、と思ってしまいますが、それを納得させるだけの研究を出している平野さんが作って、楽しんでね、と発売したらしい。元旦にお屠蘇の後、やってみました。自分に関して、決断に迷うことを占うのがよいとのことでしたので、今年、機会があれば大きな仕事に手を出すべきかそれとも温和しく戦線縮小を心がけるべきか、を問いました。出たのは「物の名もところによりて変はりけり難波の葦は伊勢の浜荻」、つまり何事も柔軟に、というお告げでした。占った甲斐がないような・・・しかし未来記や宣託には一定の文体があって、後から思い当たるように書かれているのが定式です。ブログを始めるきっかけとなりました。

 もう一つは原田香織さん解説の『かなの美 小倉百人一首』(岳陽舎 2017/1  書・寺岡棠舟)。美しい和紙に繊細に書かれた和歌の図版を眺めるだけで心が満たされます。原田さんの解説も簡にして要を得たものです。惜しむらくは、トピックをもっと詳しく知りたい人のために、手がかりを示しておいて下さると有難かった(こういうのを望蜀の念という)。