美濃国便り

岐阜の中西達治さんから、菖蒲の写真入りの手紙が来ました。

[ここ数日、庭先でホトトギスの声が聞こえます。唱歌「夏は来ぬ」の歌詞に「五月闇蛍飛び交い」とあるように、皐月の風物です。今年は6月25日が端午の節句です。

子供の頃、歌っていた数え歌の結びは、♪武男と浪子の別れ汽車 2度と会えない汽車の窓 泣いて血を吐くホトトギス というもので、意味も分からずに歌っていました。正岡子規のことを知ったのは高校時代、やがて中国の古典を学び、ホトトギスに寄せる古人のさまざまな思いを知ることになります。(中略)そういえば、ウグイスの声を聞きに出掛けたのに、出先で出された蕨の煮付けに気を取られて、歌が出来なかった清少納言の話も今頃のことです。

皐月朔日、巣ごもりになれた耳に聞こえたホトトギスの声。来世を素直に信じているわけでもないのに気になったのは、方丈記の1節ですー夏はほととぎすを聞く。語らふごとに死出の山路を契る。(中西達治)]

時鳥は万葉集の時代から、死後の世界と往来する鳥と考えられていました。口の中が赤いので、鳴きながら血を吐くと言われ、子規(時鳥の別名)は喀血をしゃれのめした号です。明治から昭和にかけて結核が流行し、未だ特効薬もなく感染する条件もよく分かっていなかった時代は、今のCOVID2019のように恐れられました。徳冨蘆花の大ヒット小説『不如帰』(時鳥の別名)の主人公浪子は、肺結核で帰らぬ人となります。子供の数え歌になっていたとは初めて知りました。

50年前は小石川の街中でも早朝には、護国寺の杜で時鳥の鳴くのが聞こえました。数年前、ご住職にその話をしたら、今でも鳴いてますよ、と言われました。