食いしんぼ

コロナの街は、天気が好いと老若のカップル(若い組にはマスクなしが増えた)や子供連れで一杯になる(自転車やキックスケーターを交えた家族連れで歩くのは、やめて欲しい。自分たちの集団内で動作を合わせるのに精一杯になってしまって、路上でどれだけ自己中になっているか、分かってるか!)ので、こまめに小路を曲がったり表通りへ出たりしながら、買い物に行きます。

裏通りでは、生垣の葉陰から、赤く色づいたユスラウメの実が覗いていました。思わずつまんで口に入れたくなって、他人様の生垣であることを、はっと思い出しました。春先に、可憐な小さい桜型の花が咲く果樹です。酸っぱいけど食べられるよ、と祖母が教えてくれて、70年前の子供たちにとってはおやつ代わりでした。

表通りの銀杏並木の下に、モミジイチゴが一叢茂っている所があって、これも葉陰にオレンジ色の熟した実が覗き、思わず手を出しそうになりました。10代に住んでいた小石川ではごく普通に自生していましたが、こんな所にどうして生えたのか不思議です。木イチゴの一種で、白い花と大きな濃い緑の葉は存在感があり、生け花の素材として花屋でも売られています。小中の頃は友達と遊びながら実をつまみ食いし、高校生の頃には、自身の思春期と木下闇の季節とが二重になって、悩ましさと重苦しさの象徴に見えました。

思いがけない路傍に、姫ヘビイチゴの実を見つけました。ビーズほどの赤い小さな実ですが、数が多いと綺麗です。調べると、生食には向かないがジャムにはなる、とありました。これでジャムを作るのは大変でしょう。かつて勤務した宇都宮大学の構内は、ほどほどに雑草が残してあり、ヘビイチゴの群落があって印象的だったことを思い出します。帰りに通ったら、実はなくなっていました。犯人は雀の子でしょうか。