ハモンドオルガン

古関裕而という名前とハモンドオルガンとは、記憶の中で堅く結びついています。子供の頃(70年前です)、夕方6時、ハモンドオルガンが軽快に奏でるテーマ音楽に載せて、菊田一夫作・古関祐而音楽というコンビで放送された、連続ラジオドラマがありました。

一番古い記憶は「鐘の鳴る丘」(主題歌「とんがり帽子」)です。戦災孤児たちが暮らす施設が舞台でした。主題歌は人気があり、たしか11番くらいまで歌詞が作られたと思います。歌詞は身にしみるものでしたが、筋は殆ど覚えていません。ただ「緑の丘の赤い屋根 とんがり帽子の時計台」という欧風、童話的な建物はロマンチックで、現実離れしていると子供心にも思いました。菊田一夫古関裕而、そして声優巌金四郎(歌手なら藤山一郎)という組み合わせは、当時のNHKの顔でした。

当時(戦後の物資のない時代)はあらゆる物が「代用品」だったので、ハモンドオルガンも簡易オルガンかと思っていましたが、調べてみると、1930年代からジャズやロックの世界で愛用され、70年代にシンセサイザーに取って代わられた電子楽器だったのですね。古関裕而から冨田勲へ、という音楽史は考えたこともありませんでした。

作品一覧を眺めると、その時代の人の心を掴んだ曲が幾つもあるー「長崎の鐘」「イヨマンテの夜」「フランチェスカの鐘」「黒百合の歌」「栄冠は君に輝く」・・・軍歌もそういう才能の表れだったのでしょうか。芸術作品の自立性は難しい問題です。解釈は享受者の自由、しかしこういう利用の仕方だけはできないという仕掛けをしておくべきだ、という意見に共感します。数日前、桑田佳祐のステイ・ホームブルースが出ましたが、見境なく抱きつくことはできない仕掛けになっている。

私は朝ドラも文春新書も見ていないので、あくまで個人的追想です。