囲い込み

世田谷で住んでいた小さなマンションは、エレベーターがなく、通路部分は外から丸見えでした。買う時に先輩から、「ちょっと不便だけど安全だよ」と言われて、そのときは意味が分かりませんでした。住み替えでいくつものマンションを見て歩いた時、オートロックは必ずしも安全ではないなと思いました。一旦入ってしまえば隠れ場所が多く、逃げ場がないように設計されていることが多いからです。しかし今やオートロックではない物件は少ない。現に、誰かの後ろにくっついて入ってしまったチラシ配りが、出られなくてうろうろしているのに出会ったりしました。

会員制のSNSと、公開制のブログ(誰でもコメントを書き込んだり、星をつけたりすることができ、それもまた公開される)、公式サイトなど、ネット上には異なる態勢のコミュニケーションが混在しています。ツイッターやブログで読んだ意見に「いいね!」をつけようとしても、会員制の場合はログインしないとできません。自分のブログがフェイスブックで何を言われても、会員にならないと知らされません(会員になればいいじゃないか、と言うのはまた別の話)。

会員制はオートロックのマンションに似ている、と思います。仲間内なら安全なようだけど、そこには落とし穴がある。ツイッターも、これを見てくれる人は自分の仲間、という錯覚に陥りやすいところがあるのではないでしょうか。仲間でない人からも「いいね!」を貰えるか、あるいは反論されるかも、という緊張感を欠いたまま調子に乗って言い過ぎたり、愚痴をこぼして慰めてくれた相手を保護者だと思ったり。

ちなみに私がSNSを利用しないのは、単なるめんどくさがり屋だからですが、文化的になじめないからでもあります。それは土龍の勘のようなもので、外部へ意見を述べるということと、囲い込む制度との整合性に、いま一つ信が置けない気がするのです。