古都

平勢隆郎さんから、巴里便り第2弾が来ました。

[所長のお勧めに従い、歩いてあちこち訪ねてみました。すでにサンマルタン門を見ていますので、同じ凱旋門をということで、通りを西に進み、気の向くまま歩いていたら、ナポレオンが建てたいわゆる凱旋門につきあたりました。この通り沿いには、別の凱旋門サンドニ門。サン・ドニ大聖堂に続く門)があります。門の向きは違っています。パリ旧市街の構造によるのでしょう。
 サン・ドニ大聖堂は宿舎の近くで、そこにはブルボン王家の墓があります。サンドニ門の外側ですが、平安京の鴨川の東が鳥辺野という墓地でしたよね。似たような考え方があったんでしょうか。平家の根拠地のあたりですが。](平勢隆郎)

都市のすぐ外側に墓地がある、というのは、集落の傍には水源があるのと同じくらい、自然なことかもしれません。平家の屋敷が鳥辺野の近くにあったのは、新興勢力が入手できる土地はそこしかなかったからだ、という説を読んだことがあります。

私が巴里に滞在したのは科研費の用務だったので、全くの弾丸ツアー(まっすぐ行ってまっすぐ帰る)でしたが、古都とは、そこに居るという感覚だけでも特別なものですね。殊に巴里は、美術から、食から、映画やファッションから、またシャンソンから等々、憧れを持つ人は少なくないと思います。私の場合は、青春時代に愛読した『チボー家の人々』の影響が大きい。雨に濡れた舗道に舞うマロニエの落葉、その匂いや湿り気までもが憧憬の対象でした。実際に行ってみて、居酒屋の注文を、ランチョンマットに直接さらさらと書くのがかっこよく、ホテルの朝食がクロワッサンと珈琲とオレンジだけ、というのも素敵でした。バスで市街へ入った途端、教会の晩鐘が鳴り出した時は感動しました。