積木的議論のために(6)

メディアを選ぶ、ということの条件が様変わりしつつあります。単に重要だというだけでなく、結果が大きく異なってくる、そして発信内容のみならず発信者の評価にもかかわってくる、との自覚が、いまどれだけの人にあるでしょうか。メディアなどと大上段に言わず、通信手段、連絡手段と言った方がいいかもしれません。

殊に注意や異見を伝える際に、肉声で言われれば何でもないのに、メールで言われると心が折れるのは、よく経験することです(先発世代の私たちだけでしょうか?)。ツイッターも同じ。ツイッターは、上限字数でなく最少字数制限を設けて議論すべきだという、ある映画監督の提案を読んだことがあります。論争と銘打つほどではなくとも、互いに対立する価値観をすり合わせる場合には、まずテンポを落とすことが必要です。相互にどこまでは共有していてどこから相違するのかを言う必要があり、自論の根拠を示す必要もある。積み木はゆっくり積まないと崩れます。140字では、積み木ほどの大きさはなく、噛み合わせのない断片を、投げつけ合うだけになりやすい。つまり、礫です。礫は喧嘩には向いているかもしれないが、双方で積み上げていくには向いていません。もしそれを目指すなら、参加者全員がよほど短文の達人でなければならない。とどのつまり、単なる不機嫌のやりとりか、相手の臑を蹴りつけるような卑劣さに陥ってしまいます。

新しいメディアには新しい文体、それに応じた作法が必要だとつくづく思います。ハッシュタグやトウギャザーは、それなりの利便性があり、使い道があるが、対面しながらの討論や、往復書簡とは異質の手段です。上手に使って、建設的な体験をしたいものです。「折り合う」などという俗っぽい解決とは、また別に。

お断り:最近出た本をめぐるハッシュタグとは、直接の関係はありません。