カードサイズ

現役時代、結構な額の健康保険料を払っていた時期は(頑健だったからではなく)、忙しくて医者にはかかれませんでした。たいていの症状は、1食抜いて腹を温めて寝るとか、父親が作ってくれた卵酒を飲んで早寝する、とかで治しました。それゆえ、健康保険証の大きさなど、かつては気にしたこともありませんでした(その頃は、大きなバッグにたくさんの物を詰め込んで提げて歩いていたためもあります)。

定年後、保険証は3度変わります。健康保険証を2種類持ち歩かなければならない時期もあって、しかも2枚の大きさが異なり、どちらかがないと無保険扱いにする病院もあります。会計窓口でそう言われ、慌ててタクシーで自宅まで取りに帰ったこともありました。現在、私は後期高齢者保険証1枚ですが、カードサイズではないので財布には入らず、急に身分証明証を求められた時などは携帯していないし、必要な時はウェストポーチ以外のバッグを持ち歩かなければなりません。不便を忍んでいます。

新聞の投稿欄に、カードサイズの保険証をよく失くす老親の話が出ていました。後期高齢者医療広域連合に対して、ユニバーサルデザインの観点から葉書大にして欲しい、という要望です。ん?どうしてここにユニバーサルデザインが出てくるのか?一般的に言って、小さなものを大きなケースに入れて失くしにくくしたり、拡大コピーして本人が読みやすくしたりすることは可能です。逆に私のように、荷物を少なくして自力で活動しようとする老人からは、ぜひ小さな、カードサイズにして欲しい。

ものごとにはいろいろな側面があり、いろいろな立場がある。片仮名書きの、あるいは漢字熟語の、当代流行の用語を鏤めれば主張に妥当性が増す、というものではない。積木的議論を大切に、スマートな知恵を組み立てたいものです。