房総半島

西の方から羽田へ帰ってくる時、たまに飛行機は房総半島を旋回しながら降りていきます。九十九里浜の弧が目に入って来るまで、かなり盛り上がった山林地帯が続き、一体どこかな、と思ったりしたものでした。千葉県が広域な山と森であることを、首都通勤圏とのみ捉えていると、忘れがちです。

頼朝が旗揚げ直後の石橋山合戦で敗北し、東京湾を渡って房総半島へ逃げたのは、千葉氏の勢力をあてにしたからだと考えられがちですが、その幾分かは結果論かもしれません。伊豆箱根を追い出されてまず逃げ込む先は、海に囲まれた広大な山林を擁する房総地区(そしてそれを支配していた千葉氏の許)だったのかも。

人里離れた一軒家で暮らす人を突然訪問するTV番組が、高視聴率を誇っています。最近の放映を視ていると、殆どが山林のただ中です。日本は島国というけれど、つくづく国土の大半は山林なんだなあと実感します。一時期、社会史や民俗学で「山の民」という言葉が流行りましたが、海に面した文化だけでは日本は分からない、と反省しました。体力のない私には、70歳過ぎても山林の中で当たり前の日常生活を続けている人たちを見るのは一種の驚きでもあります。

今回の台風被害からの復興、殊に電力供給の回復が遅れたのは予想外でした。緑多い環境は羨ましいことですが、大都市とは別の住環境作りに、手ぬかりがあったのではないでしょうか。まずはインフラ回復を、そして都市と山林両方を抱えた地域計画の練り直しを、陰ながら見守っていたいと思います。