辞退率

就活援助をうたうビジネスが、辞退率を予測するデータを勝手に売っていたのは、個人情報保護法に触れるとして警告を受けたそうです。そういうビジネスが成り立っていることを知った時は憤慨し、就活生に同情しました。説明する機会のない情報で将来を判断される、それでは採用を広告した側との間の信頼関係はどうなるというのでしょうか。

しばしば疑問に思うのは、就職とは、採用する側が絶対的権限を持ち、される側が平身低頭、あるいはどのようにも仰せの通りにいたします、と言える態勢を取って臨む、という案件なのかということです。口に出しては言わないまでも、志望者の方も就職先を選んでいる、未だ雇用関係が成立していないのだから、両者は対等です。人事担当者たちは、自分たちも選ばれているのだという感覚を、普段から持っているでしょうか。最初から「御社」一筋、他の企業のことは調べもしません、などという目隠しをつけた馬車馬のような人材を欲しいと思っているのなら、その企業の将来は暗い。あれこれトライしてみてから、やっぱりここで仕事したいと思って貰えたら光栄、我が社にはそのくらいの自信はある、という人事担当であって欲しい。

無論、現実の力関係の中では、そんなスタンスは夢物語でしょう。しかし、基本的にそういう考えに立って志望者に接するか否かが、企業の将来に影響するのだということを採用側は解っていなくては。驕れる者久しからず―落とした志望者たちはライバル企業に入るかもしれないし、少なくとも顧客になる可能性が大きい。

第一、今どき人間1人の勤労期間(40年)の最後まで、着実な経営を必ず保障できますか?創業者以外、誰にもそんな断言はできない時代です。