軍記・語り物研究会大会2019

紀伊田辺市で開かれた軍記・語り物研究会大会に出かけました。大会日程は3日間ですが、前後の2日は事前予約制だったので、仕事仲間と2人で、25日の午後は闘雞神社(境内には、壇ノ浦合戦直前に、源平どちらに就くべきかを占う闘鶏が、弁慶立ち会いで行われたという銅像がある)を見学し、26日の研究発表会だけ聞きました。

海は薄曇りの空の下、鈍く光りながら広がっていて、まばらな海水浴客が夏の終わりを感じさせました。潮風を浴びるのは何年ぶりか、その香りだけでも癒やされました。

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闘雞神社

研究発表5本を聴きましたが、そもそもプレゼンテーションに問題がある(本人が気づかない口癖「まあ」や「ですね」が気になって、発表全体が聞きにくい)と思うものもありました。陳晨さんの「『源平盛衰記』における『後漢書』の受容について」は、よく整理されていて分かりやすく、今後『史記』や『漢書』との関係も含めて、大きな仕事になりそうです。藪本勝治さんの「『吾妻鏡』の和田合戦記事」は、従来から言われている『吾妻鏡』編集の意図を具体的に掴み出そうとするもの。『吾妻鏡』がじつは虚構と構成意識に基づく「編纂史」であることは、もっと周知されてよいことです。

早川厚一さんの「半井本『保元物語』の山田小三郎是行譚を読む」は、一類本保元物語を古態性や表現の未熟さに注目して論じるのでなく、それなりの文芸意識と独自の合理性を持った作品として読む試み。軍記物語講座第1巻に寄稿される予定です。

山本洋さんの「戦国軍記の類型化に関する一考察」は、諸本というより「類作」「同材作品」の多い戦国軍記を大量に蒐集・分類するために、計量分析を応用することが可能かという問題をとりあげた発表。すでにある程度の試行を経た上での報告だそうで、説明は明晰でした。

合間には地元の食材(梅や鮎)を楽しみ、往復13時間の車中でたっぷりとお喋りもして、元気の出た2日間でした。