梅雨明け

東京の梅雨明け宣言が出た日から、蝉の声が蝉らしくなりました。それまでは口ごもりながらでしたが、油蝉もみんみん蝉も、それと分かるように鳴き始めました。しかし蝉時雨ではなく1匹ずつ。この界隈も続々家が建て替えられ、敷地一杯にコンクリートの箱が詰まり、僅かな前庭もアスファルトで固められて、蝉の棲息が難しくなったのです。

角の焼鳥屋は50年前、歩道にカウンターを出していて、大学院時代、同期の男子から失恋の愚痴を延々と聞かされましたが、最近、餃子とラーメンとタピオカを出す中国人の店になりました。肉丼かラーメン・餃子か、今では似たような店ばかりが並びます。

古い街なので一見変わらないように見えますが、じつは10年も経つとあちこち入れ代わっている。『方丈記』の言う、「都のうちに、棟を並べ甍を争へる、高きいやしき人の住ひは、世世を経て尽きせぬものなれど、これをまことかと尋れば、昔ありし家は稀なり」が実感されます。

今年は机に向かって細かい内容を読む仕事が続き、風通しのいい我が家で金太郎スタイルになっても、1日暑さと闘うとぐったり疲れてしまいます(ピンクの短パン、臙脂のタンクトップで郵便受けを見に行ったら、近隣住人が1歩引いてウホッ!と言う。渋谷へ行ったら、こんな格好、珍しくないよ)。10年ほど前までは、暑い盛りの午後2時頃に、どうせ仕事の能率が落ちるからと買い物に出たのですが、もうそんな蛮行はできません。印度の壺に水を張ってベランダに転がし、日に何度も打ち水をします。

元気なのはランタナコリウスです。ランタナの花を剪って冷暗所の洗面台に飾ったら、球形の花の半分しか開きませんでした。極熱の太陽の下で咲きたかったらしい。法師蝉が鳴き始めるまで、今年は何日あるでしょうか。生き延びなくっちゃ。