軍記・語り物研究会422

軍記・語り物研究会第422回例会に出ました。会場は駿河台の明治大学。久しぶりでお茶の水駅から歩くと、両側の楽器店にはギターがずらりと吊されていて、売ってしまった若い頃の愛器が思い出され、胸が疼きます。

発表は2本。梅田径さんの「近世末期索引類の依拠本文と項目採録宮内庁書陵部蔵『類標』の軍記索引を中心に―」と、阿部亮太さんの「『保元物語』鎌倉本・宝徳本の共通祖本―両系統本文成立の前提として―」でした。参加者は20名程度でしたが、若い人が多く、以前よりも研究会らしくなったように見受けました。

梅田さんの発表は、近世後半に民間で作られた平家物語の索引にはどんなものがあり、誰が、何のために作ったか、を考えるもの。若い頃、やみくもに「平家物語」や「源平」の名のつく写本を片端から見て歩いた時期がありました。あまり数は多くないものの、抜き書きや索引の薄い写本を幾つか見かけ、恐らく語注のための手控えだったろうと推測していましたが、おおよそ、その予感は当たっていたことが分かりました。多分野の人たちと組んで、電算機を利用してDBを作るなどの共同研究をお勧めしておきました。

阿部さんのテーマは、保元物語の諸本論。永積安明・犬井善寿・原水民樹各氏の説を踏まえ、原水氏の想定した、鎌倉本と宝徳本の共通祖本の姿を探ろうとしたもの。祖本には恐らく為朝渡島譚があり、また宝徳本と鎌倉本は構成・本文ともに近似しているので、欠失した鎌倉本中巻にも崇徳院記事があったと考えています。こういう祖本想定作業は、最近の平家物語研究ではあまり行われなくなりましたが、保元物語には未だ必要な手続きなのでしょう。

帰宅してTVをつけると、投票締め切り1時間後には、はや大勢が決まっていました。