ついてない日

今年2匹目のゴキブリに遭ってしまいました。若い人に関してちょっと厄介な話にぶつかり、しょげていた夜です。父の郷里福岡ではこの虫をゴッカと呼び、夏の夜、突然現れたところを追いかけ回すには短くて呼びやすいのですが、東京ではゴキブリと呼ぶのに、なかなかなじめませんでした。語源は「御器をかぶる」(囓る意なのか、潜り込む意の被るなのか、両説ある)とされているようで、ゴキカブリからゴッカに変化するのは納得できても、カ音が落ちてゴキブリに変化したとは、どうも腑に落ちません(誤植が原因との説もあるらしい)。

いろいろ種類があるようですが、つやつやと黒光りする大きな奴です。例年、夏の初めか終わりかに1、2匹遭遇して追い回し、あの世へ送るともう遭わずに済むので、今年ももうこれきりにしたいものです。蔵書の糊に味を占められては一大事と、要所要所に置き型の防虫剤を仕掛け、キャンデーの包み紙に至るまで食べ滓の始末には留意しているのに、雨樋や排水管などを伝って侵入してくるのは防ぎようがない。横浜にいた時は、向かいの家から羽音を立てて飛び込まれ、さすがにこの時は怯みました。

鳥取在勤時代、半年の内地留学を終えて真冬のアパートに戻ったら、奴らの死骸が点々と落ちていました。夏の終わりに餓死したらしく、使いかけのティッシュペーパーのつまんだ部分(汗が沁みていたらしい)が、囓り取られていました。怨念がありそうで不気味でした。

家の中の虫はほかにもいろいろいるのに、何故彼だけが不愉快なのか、考えてみても説明出来ません。あの素早さ、油光り、それに不意打ち感でしょうか。厄介な話をどうするかは、一晩考えます。これにて御免。