2000万

金融庁有識者会議、金融審議会の市場ワーキンググループが出した報告書が話題を呼んでいます。国会では、首相がずれた答弁をし、財務相は記者会見で、報告は政府の方針に合わないから受け取らない、と言う(諮問したんじゃないの?)。報告書をよく読めば、老後に不足する額は¥2000万どころか¥3660万だとする報道もあります。

以下は、あくまで個人の見解です-あらゆる情報は、どういう立場の誰が、どういう目的で出したかをふまえて評価するのが鉄則。この報告書は、「金融庁」が出させたもの。個人の貯め込んだ資金を市場に吐き出させ、活発に流通させる(必ずしも当人の手許に増えて戻るとは限らない)ことを望む立場からだという前提で読むべきでしょう。

金融庁の公式サイトに載っている報告書の全文と資料の一読をお勧めします。全部は読めねえ、という向きには、p37~51の付属文書1、2だけで十分です(1は「高齢社会における資産形成、管理の心構え」、2は同じく「金融サービスのあり方」という題)。

前記のような、発信元の立ち位置と目的を知って読めば、これはしごく尤もな情報でしょう。今後、年金だけで悠々たる老後を送れないことは、ほんとうです。殆どの人が、何がしかの貯蓄を取り崩しながら、いつ尽きるかは分からぬ寿命を生きていかざるを得ない。持ち家がなかったり、頼れる親族がない場合は、さらに不安が大きいでしょう。それを直視する必要性を説くのは、(政府発でなければ)まっとうなことです。

しかし問題は政府側が野党からの質問や世論に対し、年金積立額は増えており、年金制度は安泰だ、と言い放つこと。国民全体の生活不安を減らし、生涯に亘って真面目に生きられる社会を維持するのが、政治家の仕事です。国民には報告書を参考にして貰うが、自分たちは、国民の個人資金取り崩しが少なくて済むように、粉骨砕身すべきなのです。