高齢化社会

2025年までに認知症患者を6%減らす、という数値目標が出されたことの是非は、もっと議論されていいと思います。なぜなら、政策として数値目標が設定されると、行政の現場では100%に近い達成率を出そうとして、現状認識からいじろうとするからです。つまり、現状ではこんなに発症率が高かったのに、予防策を講じたおかげでこんなにも減少した、という数字を出したがる。それゆえしばしば、最初の「発症率」もしくは認知症患者数を高く算定しようとすることになります。

介護保険を介護予防事業の財源に充てることも、もっと数字を公開して、ひろく議論されて然るべきです。保険というからには、困った時に使えるために積み立てたはずで、適用できる機会がどんどん狭められるのは詐欺にちかい。介護予防と銘打って行われている事業が果たして全体の健康年齢を延ばせるのか、疑問視する声もあるようで、むしろ予防は個々人の費用でまかなって貰って(有料で、機会を提供する)、介護される方の不安、する方の負担を軽減するのに使うべきではないかと思います。

70歳まで働ける機会(定年延長して、ゆくゆくは年金支給開始を遅らせる)を、という方針も大きな問題をはらんでいます。65歳を過ぎると健康は個人差が大きい。誰でも、どこの職場でも、70歳まで働けるわけではありません。第一、年長者への遠慮や昇進基準をまったく壊してしまうならともかく、人生の半ばを過ぎても頭上には分厚い先輩層があるとなったら、働き甲斐や生産性は、がた落ちではないでしょうか。

私たちの世代は、年金受給には25年以上働くことが必要でした(現在は10年)。65歳を過ぎたら、勤労以外にやりたかったことを、どこからも強制されず、マイペースで実現していく人生が、誰にも許されていい、そういう社会にしたいと思うのですが。