宗祇と心敬

伊藤伸江さんから抜刷が5篇、送られて来ました。宗祇の句集『宇良葉』とそれに収められた独吟百韻の研究、心敬の連歌と和歌を集成した『芝草句内岩橋』の研究です。どれもこの3月に、勤務先の愛知県立大学関係の雑誌に発表したもの。大先輩の奥田勲さんとの共同研究も含まれています。

高岡市立中央図書館本『宇良葉』の研究と翻刻」(「説林」」67号)、「桜井本『春日左抛御前法楽独吟百韻』訳注三」・「同四」(「愛知県大大学院国際文化研究科論集」20号日本文化専攻編・「同大日本文化学部論集」10号)、「芝草伝本の一考察」(「同大文字文化研究所紀要」5号)、「本能寺本『芝草句内岩橋上』訳注六」(同)の5篇です。連歌研究は必然的に新資料の調査、解読、注釈という、いずれもエネルギーを必要とする作業が核になるのですが、伊藤さんはここ数年、このペースで成果を出し続けてきました。

連歌は作るのが楽しい文芸で、読んだり鑑賞したりするのにはちょっと慣れが要りますが、連歌師の教養(例えば『源氏物語』の本文DBが脳内にある)や、即興で協同制作する能力は、現代人からは驚嘆に値します。南北朝以降は、武士たちもたしなみの一つとして、ときには政治的に利用したりもして、連歌師との交際を大事にしていたようです。軍記物語でも無視できない存在でしょう。

伊藤さんは、国文学だけでなく数学や統計も得意とする人で、充実したHPを開設しています。平成21年度からずっと科研費を獲得し続け、その成果を掲載しているのです。目下は基盤研究(C)「独吟百韻分析による宗祇連歌の多面的新研究」を実施中だそうで、詳細はhttp://ito-okuda-kaken.jimdo.com/にて。