変わる植生

中学校の塀際に、ピンク色の小花をつけた、見慣れない草が揺れているのを見つけました。カラスビシャクなどを根こそぎ除草した跡です。植えたとも思えないし、ただの雑草とも思えない。ウェブで調べると、どうやら夕化粧というらしい。

最近は、園芸品種なのか雑草なのか見分けがつきにくい草が路傍に多くなりました。マツバウンランツルニチニチソウ、ツルミゾソバユウゲショウ・・・しかもそれらの多くは、グランドカバープランツ(GCP)と呼ばれる、地表を覆う目的で用いられる植物で、繁殖力が半端ではない。身近な植生が変わりつつあります。

16年前、世田谷区から文京区へ戻ってきた時、アスファルトの隙間のそこここに菫が自生していて、しかも3~4種類もあるのを見つけて吃驚しました。それより40数年前の文京区にはもっと緑は多かったけれども、路上に菫が自生しているのは見たことがなかったからです。しかしここ数年で菫は殆どなくなりました。舗装の改修や土地を細分化して家を建てたりする際に、地下に塗り込められてしまったのです。いま思えば、あれらは庭に植えられたものが野生化していたのかもしれません。

このところ我が家の近辺を支配しているのは、ハルノゲシオニタビラコ、それにあのGCP連中です。ハルノゲシは成長が早く、たちまち頭角を顕し、存在を主張します。オニタビラコは生えた場所に合わせて草形を変え、厖大な綿毛の種を飛ばします。小憎らしい気もしますが、よく見ると、建造物の足元に生えた場合、真っ直ぐに伸びる花茎を囲んで、ロゼット状の葉が建造物に沿って90度に立ち上がり、黄色い小花が群がって咲く姿は、都市の風景によくなじむ草だとも思えます。

変わるのは建築や習俗だけではない。植生もまた時代につれて変わっているのでした。