お別れ会

有吉保さんのお別れ会に、日大文理学部へ出かけました。中世和歌と書誌学の大家です。受講したことはありませんが、何かにつけて可愛がって頂きました。ご自宅へ伺ったこともあり、端本の平家物語をぽんと下さったこともありました。若くてパワハラに苦しめられていた頃、後になってからでしたが、当時ずっと期待して見守っていたことをほのめかされ、どんなに気持ちが楽になったかー今でも恩に着ております。

久しぶりで世田谷線に乗り、新緑と花々の中を下高井戸まで行きました。大教室に献花台が設けられ、隣室には著書や写真が並べられていました。胸を打たれたのは、和歌文学研究会の学生のレジュメが置いてあったのですが、最新の日付は今年の3月13日。亡くなる1ヶ月前まで、若人たちと一緒に勉強しておられたのでした。

何だか寂しかったので、喪服のまま根津美術館へ、光琳の燕子花図屏風を観に行きました。この時季にこの屏風を、ここへ何度も観に来たので、一緒に来た友人たちの誰彼を思い出します。次第に別れが多くなるのは仕方がないとしても、会える間を大事にしよう、と思いました。展示は5月12日まで。

一服してから、「机上を彩る箱」と「風薫る茶席」の展示も観ました。手箱など蒔絵の意匠の面白さに魅せられました。有吉さんも、机上の文物を収集しておられたことを思い出します。亡父のコレクションを手放して身軽になってからやっと、陶磁器を愛しむ余裕ができ、安南染付鳥文茶碗の面白さに見入ったり、小代の掛分釉手鉢に1口ずつの酒肴を載せてお客を呼ぶような暮らしをしたいなあ、と思ったりしました。

瞼裏に溢れる今日1日の新緑や花々のすべてを、お別れとして捧げます。合掌。