棲み分け

眼科の定期検診に出かけました。冷たい雨の降る日で、杖と傘とを持つと手が混乱し、我ながらもどかしい。バス停の雨だれに打たれて、鷺苔が咲いていました。苔ではなくれっきとした草なのですが、地べたに這うように広がり、盆栽の根元に貼り付けると風情があります。土壌によって貧相になったり大輪になったり、いろいろです。

この時季の草は、伸びる力と新しい葉茎の形姿の美しさに思わず見とれてしまいます。私は、海なら終日見ていても飽きないし、その次には草、そして空ゆく雲も、いつまで見ていても飽きません。幼年時代に海辺で育ち、病気がちだったので仰臥して暮らし、(当時は子供向けの絵本などは貴重品だったので)植物図鑑を読みふけっていたためでしょう。草原か浜辺に、車椅子で放置されても暮らせるなあ、と思いました。願わくはいい本が1冊、手許にあれば。

大学病院はいつも通り混んでいましたが、朝一番で来た人たちの波が引き、午前の最後の診察に間に合う時間帯を狙うと、スムーズにいきます。この病院も大学入試で女性の合格を抑えたらしいのですが、眼科外来には女医が多く、看護師やそのほかのスタッフにも女性が多くて、雰囲気がもの柔らか(例外的医師はいますが)なので、好意を持っていました。性的棲み分けが成功していたのであれば、悲しいことです。

検診のために差した目薬で瞳孔が未だ開いたままなので、世界が滲んでいます。それゆえ本日はこれまで。