ムスカリの受難

葡萄ムスカリが花房をもたげています。蕾が見え始めてからもなかなか伸びないのに、ある時点までくると一気に青紫の花房を捧げて、自己主張します。

もともと小学校の塀の下に植えてあった球根が、霜でむき出しになったり、野蒜と間違えて抜き捨てられたりしたのを拾ってきて、我が家で増やしました。小学校の方は、躑躅の植え込みを刈らないので、ムスカリは日陰に閉じ込められてしまい、我が家から少しずつ球根を返しました。車止めのプランターにも、米粒のような、仏舎利のような小さな球根を埋めておいたのが、数年経って30本もの花を咲かせました。可愛らしい。

ところが学校帰りの子供たちが、花を摘んでしまうのです。それも茎を付けずに、花首だけもいでは捨てていくのがいる。残酷です。ある日、男の子の現行犯を見つけ、注意しました。1年に1回しか咲かないのだから可哀想だよ、どうしても摘みたければ茎ごと摘んで、お母さんに花瓶に挿して貰いなさい、と言ったら、それじゃお父さんの分も、と言うやいなやもう一つ、ぽいともぐ。ぶん殴りたくなりました。

女の子の間では、花をぼろぼろにほぐして、ままごとの御飯に見立てるのが流行っているらしい。子供ではしかたがないのかもしれませんが、諦めきれません。球根にとっては1年に1度のことなんだと、親御さんは教えておいて欲しいと思います。捧げる花房を喪った茎が、何本も天を指して立っているのを見るのは、悲しいです。