はっさく

はっさくを買ってきました。仏壇用なので、1個か2個でいいのですが、何故かはっさくはネット入りで売られています。もう重い物を持てなくなって、はっさくを買った日は、蕪や白菜などは諦めて帰って来るしかありません。亡父は柑橘類が好きでしたが、中でもはっさくとグレープフルーツが好きで、伊予柑ネーブルのような身が柔らかすぎるものは嫌いでした。特にはっさくは酸味がちょうどよく、身が締まっていて、「高貴な感じがする」と言って喜びました。トルコへ出張した際に、半月形の小さなナイフを買ってきて、房を剝くのに専用で使っていましたが、そう言えばあれはどうしたっけ。遺品整理をした際に処分してしまったかも知れません。

柑橘類は、地方ごとにじつにいろいろな種類があり、最近はたんかん、ぽんかん、黄金柑なども店頭に出ています。調べてみると、はっさくは広島県因島に突然現れた品種で、明治・大正から広まったようです。柑橘類は交配しやすく、新品種(雑柑と呼ぶらしい)が生まれやすいのだそうで、甘夏が普及するのと同時くらいに東京でも目につくようになりました。

かつての夏蜜柑の酸っぱさは、眼が覚めるほどでした。大学院で万葉集を習った五味智英先生は、学生時代は放課後図書館に籠り、夜になると夏蜜柑1個を食べて閉館まで勉強した、と仰言っていました。それゆえ私にとって夏蜜柑は、未だに禁欲的なイメージがつきまとっています。

はっさくという名前は本来、八朔(8月1日。武家政権下では主君と臣下が、贈り物を交換して主従の契りを確かめる日だった)にちなんだと言われているのですが、収穫は12月頃からなので、その由来がいま一つ腑に落ちません。