加虐の心理

やはりこれだけは書いておきたいー10歳の長女を父親が死なせた事件について。今までいじめや虐待事件の度ごとに、大人に相談しなさい、という尤もらしい忠告がなされ、私は鼻白む思いで聞いていました。子供は自分の親を守ろうとします、たとえ鬼のような親であっても。そしてよその大人たちに話せば却って事態がむつかしくなることは、今回、教委や児相が、これ以上はないというほどの実例を示してくれています。

まず、民法の懲戒権なるものはなくすべきです。今どき体罰でしつけなければならない親子関係は、親の方が問題です。真剣な表情さえ伴っていれば、幼児でも言葉で解らせることはできます。今回の場合、関係者の最大のあやまちは、親の方の問題を解決しようとしなかったことです。夫婦の間や病児の介護など、複数の困難があったようですが、それ以上に父親のDVを矯正せずに放置したことが、根本的な問題です。

いい加減に家族神話から目を覚ますべきです、殊に福祉関係者は。血の繋がった両親のいる家庭に囲い込まれるのが、子供にとっていちばんの幸福とは限りません。戦後しばらくは困窮した母子家庭の親子心中がよく報道されましたが、その度に、子供を道連れにするのは親のエゴだという批判がなされたことを思い出します。

虐待やいじめやパワハラの加害者を受動的に観察すると、自分自身に苛立っている人が多い。心理学は素人でしかありませんが、私はそう思います。自分ができないこと、評価して貰えないことを、身近な弱者が鏡になって映し出しているような気がし、攻撃すればするほど自分の至らなさが跳ね返ってくる。被害者側からは、あなた自身の問題だと言うしかない(多くの場合、そうは言えずに顔に出てしまって、ますます相手を逆上させるか、自虐的なマインドコントロールにかかるか)のです。

臨床心理学や家族心理学を学んだ人たちは、ここ20年ほどの間に、数多く世に出たはずです。いま、声を揚げずに、何をしているのですか。