寒雷

昨夜、突然戸外で爆発音がしました。思わず腰を浮かしかけたのですが、街は騒ぎにならず、雷だったのだと気がつきました。天上からではなく低い地上から聞こえたような気がしたのですが、それが冬の雷なのだ、と思い返しました。

遠くからごろごろいいながら近づいてきて、稲妻が光り・・・という東京の夏の雷とは違って、鳥取へ赴任した初めての冬、夜中に、雷音とは思えない、単発の轟音に驚かされました。稲妻も光りません。ばちっ、という瞬間的な音がものすごく大きく、雷は放電だと改めて納得できます。タクシーの運転手にその話をしたら、冬の峠越えの最中に野獣の吠え声のような音を聞き、化け物に遭ったかと思ったら雷だった、という体験談を語りました。

しかし日本海沿岸では、冬の雷は雪起こし、または鰤起こしと呼ばれて、季節が順調に進んでいる証のように考えられています。これから本格的な雪の季節、または冬の漁の季節だという意味なのです。そしてその先には美しい春が来る。厳しい自然も順調に廻っていけば、それぞれの恵みをもたらしてくれるのでした。

俳句の季語にも「寒雷」という語があるのですから、以前から冬の雷は各地で聞かれたのでしょう。子供の頃にも、1年に1度くらいは冬に雷を聞いた記憶があります。ただ近年の東京では、夏にはいきなりの大雷雨になったり、寒雷の音も生やさしくない爆発音だったりして、自然が面変わりした気がします。