風葉和歌集

三角洋一・高木和子著『物語二百番歌合/風葉和歌集』(和歌文学大系50 明治書院)が出ました。故三角洋一さんの遺稿を高木さんが補充し、分かりやすくまとめた解説が付されています。月報には三角美冬さんが「夫を送って」という追悼文を書いていて、最もよき理解者が傍らにいた、三角洋一さんの幸せを立証しています。殊に「私も、もし男に生まれたら夫のような人生を送りたかった、と思う」という結びは、これ以上はない供養だと思いました。

『風葉和歌集』は、私もどこかの授業で扱った(あるいは入試問題に使ったのだったかも)覚えがあるので、序文を開いて見た時はなつかしさで一杯になりました。年を重ねるにつれ、軍記物語やその周辺ばかりを扱うようになって(それ以外に手を出す時間がない)、中世の歌集からさえ遠ざかってしまったのでした。

『無名草子』と共に散逸物語復元の資料として使われることが多い『風葉和歌集』ですが、本来、この歌集自体にもいろいろな仕掛けがあって、作り物語があたかも実在の世界であるかのように作中人物の歌を抜き出した評価基準と、その構成意識を論じたら面白いだろうに、と漠然と考えていたのです。

今となっては一読者として、本書を楽しみたいと思います。高木さんが解説で推薦している、『物語の生成と受容③』(国文学研究資料館「平安文学における場面生成研究」プロジェクト編 2008)も引っ張り出してきました。せっかく年末にツンドクの山を整理して書棚に収めたのに、昨日は『扇の草子の研究―遊びの芸文―』(安原真琴著 ぺりかん社 2003)を引っ張り出し、たちまち卓上は元の木阿弥。