桃山の茶陶

思い立って根津美術館へ、「新・桃山の茶陶」を観に行きました。ずっと机にしがみついていると、身体も精神も硬くなってしまって、どんどん劣化していきそうだからです。陽ざしは温かいが風が冷たい。館内は欧州人のカップル、和服姿のおばさまたち(茶道関係者?)、それに陶芸家らしい若者、京都弁の紳士たちもいました。

京都の三条通の両側から発掘された、16~17世紀の陶片や陶器群が展示の核になっています。この辺は陶磁器の流通・注文制作・販売に関わった地域だとかで、織部や志野、信楽は勿論、備前、高取、唐津など多種類の陶器が発掘されたらしい。陶器は、観るだけでもぬくもりを感じます。親の家を処分して、大量の陶磁器を手放してからようやく、楽しみながら観賞できるようになりました。保存管理の責任がなくなったからです。もっと早く、この楽しみを自分のものにしたかったな、と思いました。

鼠志野や絵唐津には大胆なデザインで、何も知らずに手に取ったら、とうてい数百年も前とは思えない物もありました。いいなあ、と思う物は、高取とか古唐津とか黄瀨戸とか、我が家に幼年時代からあった物が多い。苦笑しました。

気ぜわしく出かけてきたのですが、来てよかった、とつくづく思いました。さっと観て帰るつもりでしたが、2時間も経ち、カフェで一服することにしました。庭園の紅葉はもう過ぎていましたが、藁苞(藪柑子などを保護するための物だが、どうやら飾りらしい)が幾つも芝生の周囲に立ててありました。注文したホットアップルパイが来たとき、ふわっとシナモンの香りが立ち、この季節らしい幸福感に包まれました。もう数日は、この幸福感でやっていけそうです。

2階の、手鑑や正月の茶事の展示も観て帰りました。桃山茶陶の展示は16日まで。