軍記物語講座

軍記物語講座 刊行の辞

振り返れば軍記文学研究叢書(汲古書院)が刊行されてから、そろそろ20年が経とうとしています。この間に軍記物語研究も大きく変化し、新たな視野がひらけたと共に、研究対象が拡散し、文学本来の課題は見えにくくなってしまった、というのが率直な感想です。重要な課題が解けぬまま残されている場合も、多いのではないでしょうか。核心に突っ込むきっかけが、何か必要なのかも知れません。
 折から、国文学専門の新しい出版社、花鳥社が旗揚げしました。首途のお祝いを兼ねて軍記物語研究のシリーズを出さないかと相談し、全4巻で、という話ができました。従来の研究が立ち止まっている地点に新たな視野をひらき、若手研究者や歴史文学愛好家、そして他分野の文学研究者たちの関心を呼び起こし、10年後、15年後の軍記物語研究の頭出しになれば、と考えています。

第1巻『武者の世が始まる』(将門記陸奥話記・後三年記・保元物語平治物語・承久記)

第2巻『無常の鐘声―平家物語

第3巻『平和の世は来るか―太平記

第4巻『乱世を語りつぐ』(曽我物語義経記・室町軍記)

各巻の企画に当たっては、複数の方々の御意見を聞き、知恵をお借りしながら進めました。精選したテーマで、正攻法の研究論文が計60本、各巻に、軍記物語を理解するのに役立つ付録資料をつけます。絵画、芸能、日本史、和歌など他分野も含め、文学史的な広がりを意識しました。2019年秋から翌年にかけての刊行、まずは第3巻からと予定しています。

花鳥社の公式サイトには、本シリーズのスタートに当たって行われた企画会議の一部が掲載されていますので、ご参照下さい。 https://kachosha.com/gunki2019013001/