もう一つの道

先日ブログに書いた「卒論指導」を読んで、日本史をやっている友人から、メールが来ました。以下に引用します。

【「卒論指導」の記事を拝読し、私も昔のことを思い出しました。卒論は、農業史をやろうと思っていたのですが、指導教授から「ん~、史料がね」といわれ、断念しました。まとまった史料はないのですが、時間をかけて捜せば、ちょっとずつ出てくる分野なので、その後、この方面の研究が進んできたことを眺めると、あそこで頑張っていれば、という悔いが蘇ります。確かに、卒論という場では無理だったと思いますが。

後に、いい年になってから、もし卒論が農業史だったら、その後の研究生活は、面倒な概念や、やっかいな学説史に、いまほど振り回されることなく、のびのびやれていたのではないか、でも、農業史だと就職が難しかったかもしれない、など、あれこれ思ったことがあります。未練があったのと、研究史の整理が嫌いだったからですが。「私の一冊」はいまでも、岩波新書中尾佐助『栽培植物と農耕の起源』です。】(錦織勤)

勤務先が教育学部から地域科学部に改編されたとき、嬉々として地域の治水史(千代川の灌漑に関して)の講義ノートを作っていたので、えらいなあ(外的理由で研究動機を起動できるなんて)、と思ったのですが、もともとやりたかったことだったんですね。

中尾佐助の著書は、私も若い頃愛読しました(たしか選書判の本と新書『花と木の文化史』だったと思いますが、親の蔵書と一緒に処分してしまいました)。高校生の頃は植物学をやりたくて、父に進学先の相談をしたら、これからの植物学は化学だろう(今ふうに言えばバイオです)と言われ、化学は嫌いだったので断念しました。私がやりたかったのは生態学や分布学だったので、いま見れば、中尾佐助著作集の目次そのものです。