夕陽

我が家の仕事机は、間取りの都合ですべて東向きの窓の下に据えてあるので、夕方には一時的に仕事ができなくなります。本郷通りに並ぶ高層ビルの窓硝子に夕陽が反射し、眩しくて目が開けられなくなるからです。やむなくその間は、家事や買い物に当てることにしました。西日の威力は大したものです。

渋谷の10階にあった研究室では、夕方、遠く離れた六本木ヒルズの窓硝子の反射が、壁に映りました。勿論、あちらはそんなことは知りません。子供の頃、少年雑誌の小説や北村寿夫作の連続ラジオドラマには、1年のうちの特別な陽光を何かに反射させると宝物のありかを示す地図や暗号が浮かび上がる、といったストーリーがよくありましたが、もし六本木ヒルズの窓硝子に何か仕掛けがあったら、などと夢想したりしました。

古代王朝の遺跡には、春分夏至などの太陽の位置によって一瞬のメッセージが顕れる仕掛けのあるものが、あるようです。時間と人工建築物とを噛み合わせる、壮大なロマンを感じますが、古代人にとっては生活に必要な情報だったのかもしれません。我が家の場合は単なる偶然です。うっかり、鏡やレンズのついた文具を机上に置きっぱなしにすると火事の原因になる、と聞いたこともあるので、注意しています。

今日は、弱い雨や急な土砂降りが繰り返す天気になりました。時雨の季節になったのでしょう。夕陽を気にせず机に向かうことができる、しみじみとした1日です。