市ヶ谷の富士

軍記・語り物研究会に出かけました。会場は市ヶ谷の法政大学ボアソナードタワー。タワーの上へ昇ると、眼下は雄大な大都市東京です。外堀の水が緑色に光っていました。快晴で、富士山や筑波山がよく見えます。5日前に東名の正面に見た富士は、もう真っ白になっていました。まもなく東京にも木枯1号が来るでしょう。

1本目の発表は阿部亮太さんの「文保本『保元物語』の「光台寺」と「法花院」をめぐって」。『保元物語』の諸本の一つ文保本の、書写奥書にある法花院と、内題の下に記された光台寺継実(一時的所有者か)を、諸記録から根気よく追跡していました。

2本目は児島啓祐さんの「『愚管抄』の鎮魂」。『愚管抄』の基礎的研究は近年、あまり進んでいなかったので、記述に正面から取り組み、従来の思い込みを外していく姿勢に好感を持ちました。慈円が気にしていた怨霊は専ら崇徳院と忠実であって、平家一門ではない、『愚管抄』は天台密教の立場から宗教的実践としての怨霊鎮めを試みているのであって、平家物語と地続きではない、という。先は長いでしょうが、方向性としては大いに期待したいものです。

終わった後、市ヶ谷まで木の下の土手を歩きました。このところ何人もの人と打ち合わせをする必要があって、研究発表以外にも、たくさんの情報を入手して帰りました。