糸ヘン金ヘン

今さらながら、という些か申し訳ない気持ちで驚いたのは、朝鮮半島では未だ戦争終結宣言が出ていないのだ、ということでした。他国の都合で分断され、同胞同士が敵味方になったまま、70年近くが経ってしまったのです。家族も生き別れのままで。

それは、「さきの大戦」後、日本でもあり得たことだったのです。北海道とそれ以南を、東西の大国が分けて統治する、という話もあったらしい。ベルリンの壁が崩れて以来、私たちは何だか楽天的になっていますが、もし日本でも、と考えたら誰しもがぞっとするでしょう。

1950年に朝鮮戦争が勃発した時、日本は経済的に岐路に立たされていました。そこへ起こった戦争特需。当時、少々浮かれ気味の風潮と共に、「糸偏金偏」という言葉がしきりに飛び交いました(私は未だ小学校に入ったばかりでしたが、報道にこの語が溢れ、周囲の暮らしが次第によくなったことは覚えています)。繊維関係・金属関係の企業がわっと好景気になったのです。それにつれて日本の復興は飛躍的に進みました。いわば戦後日本は、朝鮮戦争のおかげで立ち直ったのだ、と指弾されても幾分かは反論できないと思います。

私は自分を、戦後民主主義最後の世代だと思っています。朝鮮戦争のあたりから日本は米国の傘の下、再軍備とその漸進的拡大という方向へ踏み出しました。軍事関係では、戦闘に絡んで、一般に広く報道されなかったこともあったのではないでしょうか。

もしやあの時の好景気を、今またあてにしようとしている人はいないでしょうね。半島の平和は、私たちにとっても必要なのです。そのことを日本人に改めて認識させるのが、ほかの何よりも重要でしょう、いま、半島の人たちにとっても。