老人力

山に迷い込んだ2歳児を、はるばる駆けつけてきて救出した老人に感嘆しました。TV報道で視る限りの印象ですが、マニュアルや研修で得た技術でなく、78年間自力で生きてきた人の能力と信念が、輝いていると思いました。

子供に呼びかけながら、単身で山へ入ったこと、まずは空腹かどうか、現在の体力や対話の可能性を飴玉を差し出して確かめたこと、バスタオルにくるんで抱きしめて下山したこと、家族に子供を「うんと褒めてやって下さい」と言い置いたこと―登山の経験を積んでいるとはいえ、状況を、相手側からよく見ています。老人は、いや若くても、こういう風に状況をよく見て、果断に行動するのはなかなかできないことです。そして、目的を果たしたら風呂も食事も断って帰ったこと、発見した瞬間や母親の喜びようを話しながら涙したこと・・・純粋でしかも毅然としている。話している最中に、大きな蜻蛉が飛んで来て手に止まったのが、勲章のように見えました。

翌朝のTVでは、日本軍が侵攻した後荒れてしまった南方諸島で、現地の人に胡椒栽培を教え、若者が地元で生活できるようにした老人に、インタビューしていました。老人力、という語が流行ったことがあります。未練がましい語だと思っていましたが、たしかに老人になったからできること、というのもあるのかもしれません。それにはまず体力がないと・・・時すでに遅し、か。