平家語りを継ぐ

平家物語の語りを肉声で聞くことが難しくなりつつあります。師匠からの口移しで伝承してきた名古屋の検校は、200句ある中の8句しか語れず、現在ただ1人の検校も、東京の公演には滅多においでにならなくなりました。

いま平家語りを、自分の声で継いでいこうとしている方々は、荻野検校(本ブログ7月9日付参照)が校訂した譜本『平家正節』による伝承ですが、津軽藩の武士たちのたしなみとして継承されてきた津軽系と、名古屋の検校の流れを引く名古屋系とに分かれます。前者は館山甲午さんから橋本敏江さんへ、そして国文学者でもある鈴木孝庸さんへと伝承されて、200句語ることができます(語り手はほかにもいます)。後者は、名古屋の検校の指導を受けたことのある、日本音楽の専門家薦田治子さんと地唄演奏家菊央雄司さんが、若手箏曲家たちと共に伝承と復元に努めてきたグループです(近世以降の検校は箏曲も演奏した)。

この秋、両方の公演があるので、未だ平家語りを聞いたことのない方は、聞き比べできる好機です。殊に「敦盛最期」や「宇治川」は両方で語られるようですし、巻九は高校の教科書などによく採られる句が多い巻です。

平家物語の世界 9月8日(土)14:00開演 

        会場:紀尾井小ホール(千代田区紀尾井町6-5) ¥2000

        出演:菊央雄司・田中奈央一・日吉章吾   解説:薦田治子

        演目:祇園精舎より・敦盛最期より・宇治川より・紅葉より・上日

     問い合わせ先:03-3237-0061 紀尾井ホール チケットセンター

 平家物語 卷第九を語る 11月20~22日 会場:江島杉山神社(墨田区千歳1-8-2)
                           出演:橋本敏江門下 鈴木孝庸 入場料:各回¥500 

         演目:20日(火)①18:15 小朝拝・生食・宇治川 

           21日(水)②10:00 河原合戦・木曾最期・樋口被斬           

              ③13:30 六箇度合戦・三草勢揃・三草合戦・老馬

           22日(木)④10:00 一二駈・二度駈・坂落

       ⑤13:30 盛俊最期・忠度最期・重衡生擒・敦盛最期・浜軍・落足
                                               ⑥18:30 小宰相

       問い合わせ先:070-6980-7123 一ツ目弁天会