授業の作り方

古田尚行さんの『国語の授業の作り方』(文学通信)という本が出ました。古田さんは「国語科教員の部屋」というブログもお持ちで、30代半ばの中高一貫校教諭です。真面目な方で、国語教育の前衛たらんとする意欲が、この本にも満ちています。

本書は、1授業の前に、2授業中のこと、3授業の後に、4授業作りのヒント集、5授業作りで直面する根本問題、6授業の作り方・事例編、7教材研究のための文献ガイドという構成になっており、文学通信(株)の発足後2冊目の本でもあります。本作りの面からいうと、率直に言って、1~3章までを独立させ、『教育実習に行く前に読む本』と銘打って、事前指導ガイドとして売るべきだったのではないかと思います。4章と5章の一部をもとに『教採に受かったら読む本』というのを1冊、そして古田さんの経験に基づき、国語教員の仕事とは何かを論じる3番目の本の核に、5,6章が据えられる、というのが望ましい。

そして最後に挙げた(未刊の)本を話題に、国語教員同士の議論が盛んになるといいですね、ウェブ上ででも。現に、読書会をやりたいというツイッターもあるようです。

なお『ともに読む古典』(笠間書院 2017)のあとがきに書いた拙文を取り上げ、「文学は文学として読まれるべき」という発言を気にしていますが、果たして正しく読んで下さっているのかどうか疑問に思いました。他人の文言を批判するときは、何がどう問題なのかを指摘して、その「問題」の中身を批判すべきです。でないと議論になりません。古典教材を読む時に、教訓に要約したくない、と私はあとがきで述べました。文学は寸言に要約できない、善悪で分断できない、この世界の複雑怪奇さをまるごと抱え込むものだからです。文学とは何か、は教室で開陳せずとも、教師の中でそれぞれに成立しているはず、それがないまま教えるなら、ただの語列をなぞるに過ぎません。もしや古田さんは、「文学」とか「古典」とかいう語を使っただけで、無前提に「いいもの」とするのでしょうか。