産児休暇・育児休暇

都立高校に勤めていた頃、ある日出勤したら、黒板に「◯◯先生産休」と書いてありました。◯◯先生は男性です。私は何かの間違いだと思って笑い出し、教頭から、公務員は男性でも子供が生まれたら2日間の休暇が取れる、知らないのか、と叱られました。吃驚しましたが、何故2日なのか、と訊いて2度吃驚。1日目は出産の立ち合い、2日目は戸籍の届け出に行くためなのだそうです。

ちなみに私は祖母から、お前の名前は母親が看護婦と相談してつけて届けてしまった、と聞かされていたので、出産届は父親がするものだとは思っていませんでした。後日、父に命名の経緯を確かめたところ、あの頃一緒にパスカルを読んでいたので、夫婦で相談してつけたのだと言っていましたが。

ある女子大に勤めている後輩から、妻が北海道赴任なので、自分が半年間の育休を貰って子供を育てている、という手紙が来ました。名目上も「育休」なのかと尋ねたところ、その通りだとのこと。勤務先では2例目だそうです。「育休はこれまでの人生がいかに自分本位であったかが分かる経験で、女子教育のためにもよかった」と書いてありました。思わず感慨に耽りました。私の適齢期には、結婚話は、女性は仕事を辞めるのが暗黙の前提で、大学院の中では、男性から見ればライバルを1人潰して有能な秘書を1人獲得するのとほぼ同義でしたから。あれから50年―世界は変えられる。科学技術の力でなく一人一人の攻略で。この人と一緒にいたければ自分が変わるしかない、と思わせた女性(私はおつきあいがないのですが)もまたすばらしい。

後輩の手紙の住所標記が「コートママ」になっているので、ああそういう名の家を選んだのだなと思ってから、はっと気がつきました。手古奈伝承の地名でした。