全釈

早川厚一さんから「『源平盛衰記』全釈十三」(「名古屋学院大学論集」54:2)と「源平闘諍録全釈七」(「同大研究年報」24)の抜刷を頂いたので、前者は『源平盛衰記(一)』(三弥井書店中世の文学 1991)、後者は『源平闘諍録全注釈(上)』(講談社学術文庫 1999)と対照しながら、この半月、びっしり書き込み作業をしました。

源平盛衰記の方は、これでようやく巻四まで終わりました。日本史の曽我良成さん、説話の橋本正俊さん、軍記の志立正知さんや国語学漢文学の方々6名のグループで、MLなどを駆使しての共同作業ですが、このペースで行くと完結するまでに百年以上かかるとのことで、不精者の私にはとうてい考えられないことです。今回は、内裏焼亡記事の細かい考証などが有益でした。

早川さんは「源平闘諍録全釈」は単独で、『四部合戦状本平家物語全釈』(和泉書院 巻十一まで刊行)は3名の共同作業で続けていて、ほかに、未発表ながら保元物語全釈も続行中とのこと。注釈はあらゆる文学研究の基本です。『保元物語』は清水由美子さんのところでも注釈作業が行われているそうですし、原水民樹さんや野中哲照さんの著作が出たこともあり、ここらでシンポジウムなどがあってもいいのでは。軍記・語り物研究会も、最近は周辺テーマの企画が目立つようですが、年1回くらいは世代縦貫で、軍記物語そのものの研究を取り上げて欲しい。受容史研究は学際的なグループ構成に向いているので、近年の主流のように見えますが、それだけが軍記・語り物の研究の推進力ではないからです。