神話と現代

『「神話」を近現代に問う』(植朝子・南郷晃子・清川祥恵編 「アジア遊学」勉誠出版)を頂戴したので、まず平藤喜久子さんの「日本神話学の夜明け」、斎藤英喜さんの「近代神道・神話学・折口信夫」、藤巻和宏さんの「日本文学史の政治性」を読み、次いで植朝子さん「19世紀ドイツ民間伝承における「神話」の世俗化と神話学」、南郷晃子さん「地域社会の「神話」記述の検証」、清川祥恵さんの「英雄からスーパーヒーローへ」を読みました。

神話は上代の問題だと何となく思いこんでいたことに、蒙を啓かれました。殊に植・南郷・清川さんの論文は、さすが共同研究の主宰者だけあって、腰が据わっています。このテーマは、世界的神話学から神道史はもとより、伝承文芸や郷土史現代思想史、ポップカルチャーに到る広範囲に及ぶのだということを理解しました。最近、シチズンシップ教育というテーマをよく見聞きするのですが、神話がそういう形で現代から未来にまで関わってくるのだということを、大野順子さんの「神話的物語等の教育利用」という論文から知りました。

学部2年の時、大学祭で羽衣伝説の企画展示をやろうとして、松村武雄の神話学を読んだことなどを改めて思い出しました。あのまま止まっていた時間が、動き出したような気がします(中世神話はまた別)。

それにしても「アジア遊学」のレイアウトは読みにくい。2段組でなければいけないのでしょうか。せっかくの意欲的な試みなのだから、もっと広く、読者に向かってひらいていく工夫はできませんか。