説話文学会

久々に、仏教資料一色番組でなかったので、説話文学会に出てみました。「判官物研究の展望」というタイトルのシンポジウムです。まずは最近入手したという「義経一代記図屏風」を紹介した小林健二さんが、『義経記』とは別に九郎判官の逸話を語る判官物の系列があること、それらには幸若や古浄瑠璃、能などの芸能の素材が盛り込まれており、中世から近世へと大きな潮流を形づくっていることを述べました。次に鈴木彰さんが『義経記』の研究史をおさらいして、今は受容史研究がトレンドであることを強調し、今後何をやりたいかを述べました。

その後、斎藤真麻理さんの「『御曹司島渡り』と室町文芸」、本井牧子さんの「『義経奥州落絵詞』の形成」、西村知子さんの「『異本義経記』を一例として(『義経記』の変容)」、伊海孝充さんの「判官物の能の手法」といった、パネラー報告が4本並びました。一つ一つは面白いけれど、盛りだくさん過ぎて並置しただけになり、シンポジウムとしての機能はあまりはたらかなかったようです。

義経記』とそれ以外の判官物と2本の流れがあるとするなら、その共通点は何なのか、一方の『義経記』を特徴付けるものは何か等々議論したいことがあって挙手したのですが、有名人たちが次々に持論展開して時間切れ。この頃の学会シンポでのお決まりコースのようですが、その日の話題に突っ込んで深掘りするのがフロアの作法ではないでしょうか。一期一会のシンポなのだから、異なる角度から大きな議論の場に持ち出したい。有名人の持論展開は懇親会でお願いしたいものです。