絹と鉄

丸の内の日本工業倶楽部の1室で開かれた会議に出ました。お濠を見下ろす一角です。工業倶楽部のファサードには男女一対の像が乗っています。女性は絹織物を、男性は鉄工業を象徴し、丸の内を見下ろしています。日本の工業は絹と鉄が支えるのだという意味らしい。何だか東欧のようで、ちょっとこそばゆい気がします。

出張で巴里の街を歩いた時、あちこちで日比谷や丸の内を思い出しました。日本の近代都市造りは欧州のなぞりから始まったのだ、と考えさせられました。丸の内の建物の軒や扉には、ちょっとした飾りが付いています。これだけを撮っても楽しい写真集が出来るかも知れません。

会議が終わって外へ出たら、未だ空は薄明るく、風が爽やかでした。東京駅の背後には巨大なビルが建ち並び、灯りがともり始めています。丸の内を歩く女性は、ヒール音が一際高い。1人前の職業人であることは、給料や地位ではなく、各自、己れ自身への要求の高さによるのだ、と心に呟きながら地下鉄に乗りました。