琵琶

国立小劇場へ「日本音楽の流れⅡー琵琶ー」を聴きに行きました。今井検校の「竹生嶋」が目当てです。国立劇場へは何年ぶりでしょうか。席に着いて、プログラムを開いて、愕然。今井検校は休演、VTRで解説するとのこと。何があったのか分かりませんが、HPででも告知したのでしょうか?今日は、いくつも用があったのを捨てて来たのに・・・しかし会場は平家琵琶が目当てという人は殆どいないらしく、平静でした。

雅楽を聴きながら、音合わせ(音取)からすでに演奏プログラムが始まっていること、楽器が次々に入ってきて始まり、次第に消えて行って終わること、笙がBGMを務めること等々をエキゾチックに感じました。プログラム(薦田治子執筆)に、覚一本平家物語を「音楽作品の歌詞」と書いてあるのは行き過ぎでしょう。九州の盲僧琵琶は、今は晴眼者たちが行事を継承している由。続いて薩摩琵琶「城山」、筑前琵琶「湖水渡」を聴きながら、平家琵琶とは全く異なって、一種の擬音効果のように、激しい奏法を以て合戦場面を描くことに気づきました。鶴田琵琶「壇の浦」は、映画「怪談」のために作曲されたのだそうです。当時映画館で観て、これは平家琵琶じゃないと思ったものでした。あの頃は木下順二武満徹など、日本の古典を現代作品に活かす試みが盛んだったのです。

会場は薩摩琵琶・筑前琵琶にすっかり魅了されていました。戦争賛美の国家戦略文学、と軍記物語を決めつける研究者もいますが、音楽の方が情緒に直接響いてくるのでずっと怖い、と思いました。

薩摩琵琶は男性的、筑前琵琶は女性向き、とよく言いますが、我が家は父親が博多出身なので、彼の高校の同級生(勿論、男子)には、趣味が高じて筑前琵琶演奏家になった人もいたことを聞かされました。六十数年前は、浪曲などと同様、筑前琵琶もよくラジオで放送されていました。琵琶の愛好家は多かったのです。

劇場バスで東京駅まで都心を走りました。最高裁、高裁、桜田門日比谷公園、有楽町・・・若い頃は国会図書館へ通うのによく通ったものですが、もう異国のようです。