白いカーネーション

国語学の故進藤咲子さんの御遺族(長女の川上彰子さん)から、お手紙が来ました。没後1周年に、母校でもあり勤務校でもあった東京女子大学の「丸山真男記念比較思想研究センター報告」13号に掲載された、追悼文2本が同封されていました。

故進藤さんとは、四十数年前、フェリス女学院大学に非常勤で出講していた時に、和歌文学の小泉和さんの御紹介で知り合いました。2人とも豪快な方で、女性が初めて大学や国立研究所へ受け入れられた世代です。可愛がって頂きました。もっと甘えておけばよかった、と思います。爾来、年賀状のやりとりだけで、お会いする機会もありませんでしたが、進藤さんは、母校の卒業生に隅々まで目を配って、育てておられました。

川上さんの追悼文には、娘ならではの温かい目と冷静な描写とが溢れていて、満足な生涯だったろうなあと心が安らぎました。母の日に捧げるカーネーション、だと思いました。TVニュースによれば、当今は、亡母に贈る花束やカーネーションの香りの線香がよく売れるのだそうです。

子供の頃、お母さんのいる子は赤、いない子は白の花をつけよと言われ、しかし学校で配られる造花は赤いカーネーションだけで、悲しい思いをさせられました。母の日なんかない方がいい、と思いました。母親のいない女の子は、オバサンたちからは同情めかした差別の目で見られることが多かったのです。

母は、この世にいなくとも母です。白いカーネーションを堂々と飾れる時代は、いい時代だと思います。