人事力

30代で初めて横浜に中古マンションを買いました。鹿島建設が造った、440世帯のマンションです。管理組合(自治会)の理事も40名、殆どが女性(オバサン世代)でした。入居の翌年、理事の番が回ってきたのですが、うっかり引き継ぎ会に出るのを忘れました。翌日、前任者から、「貴女は書記役が当たったようですよ~、皆さんが、あの人はものを書く人みたいだから、と仰言ってました」と言われました。私の職業は知られていないはず(勿論、有名でもない)だがなあ、と思いましたが、不服を言うことでもないので引き受けました。

いよいよ任期が始まり、男性理事は3名、理事長は中小企業ながら会社社長、副理事長は当時のNEC本社の部長、それに書記が登壇する三役で、もう1人の男性は36名の女性を束ねる厚生部長に推薦されていました。しかし彼は、三役でないのが気に入らない。会議でも厚生部の席でなく、私の傍に座って、絶えずあれこれ「指導」したりクレームをつけたりしました。1年間それが続き、いよいよ次年度の総会の準備が始まって、厚生部員が総会資料の仕分けをしている中へ私も入り(未だ若かったので、ジーンズで胡座をかき、煙草をふかしながら)、一緒に話していると、かの男性がはっとした様子でこちらへやって来ました。総会当日は、厚生部の中でかいがいしく働いてくれたのです。

後日、厚生部の筆頭らしきおばさんから、若いのによくやった、と褒められ、あ、この人たちが人事をやったのだと気がつきました。いま考えても、あのおばさん達の人事力はすごい、と思います。総会で答えにくい質問が出ると、中小企業社長がもごもご言い、副理事長がフォローして収まる。36名もの女性を束ねるのは、細かいことにうるさい男性でないとつとまらない。4棟もある敷地内で、話をしたこともないのに、どうしてそこまで見抜いていたのでしょうか、謎です。