胡蝶蘭が咲き始めました。毎年、花を贈って下さっていた先輩が亡くなって2年、ようやく我が家になじんで、自力で咲いてくれたのが嬉しいです。

蘭は、もともとどんな環境で生育していたのか知らずに室内で育てるので、意外な失敗があります。マレーシアやシンガポールで、デンファレがそこら中に野生しているのを見て以来、蘭は熱帯のものだと思い込んでいました。かつて家族の祝い事でカトレアの鉢植えをたくさん頂いたことがあり、ベランダに出してせっせと日に当てました。真夏の出張から帰ってきたら、カトレアが黒焦げになっていて、仰天。火事になったのかと思いましたが、じつはカトレアは林の半日陰などで育つので、直射日光に当ててはいけなかったのです。そういえば、サンルームの中の鉢に黒い紗を掛けているのをよく見かけます。数年かかって花が咲いた時は、有頂天になりました。夜、帰宅すると甘い香りが部屋一杯になっていて、幸福感を味わわせてくれましたが、翌年、地方勤務が決まり、やむなく隣近所にお分けしました。しかし花が終わると、鉢ごとゴミ捨て場に出されていました。

春蘭を、山から採ってきて盆栽に仕立てる趣味を持っている人もあります。都立高校勤務時代、園芸の教員が欠け、教頭がやっとのことで若い人を探し出してきました。高校生の時に停学処分を受けたことがあるというので、用心しながら一緒に仕事をしていたのですが、ある日、問わず語りに、高校の修学旅行先で蘭の生えていそうな山を見かけたので採集に入って集合時間に遅れ、停学を食らった、と話してくれたので、これは本物だ、とほっとしたことがありました。