鷹書

二本松泰子さん2冊目の単著『鷹書と鷹術流派の系譜』(三弥井書店)が出ました。二本松さんは、母校の立命館大学が所蔵していた鷹書(鷹を使う狩猟に関する書物)を調査するところから始めて、鷹書の共同研究に参加するだけでなく研究会を起ち上げたり、各地に伝えられてきた鷹狩りを公開したり、積極的に鷹術に関わってきた、元気印の人です。初めは文学や民俗学とどう関わるのかなあ、と思って眺めていましたが、今や資料収集も鷹術保存の運動も大きく広がり、ライフワークが定まったようです。

本書はあとがきにある通り、勤務先の長野県で出会った大量の鷹匠文書を中心に、武家の鷹術の諸流派の成立と系譜を考察しています。ちょうど私も平家語りの伝承について見直しを迫られていたので、関心があります。

猛禽類を飼い馴らして狩猟に使う風習は、日本だけでなく本書にもあるように朝鮮半島にも、ユーラシア大陸にも広く行われているようです。かつてダライ・ラマの少年時代の家庭教師の半生を描いた映画の中で、中央アジアの皇太子が、鷹を腕に止まらせながら主人公と対面するシーンがあり、一目でその権威のほどが分かり、印象的でした。

長野県は諏訪大社など狩猟神の聖地でもあって、静岡県民俗学的に曽我物語を研究している夫君の関心ともスイッチし、無理なく研究を発展させられる環境が開けたのではないでしょうか。努力は報われる、そう思える実例は、傍目からも嬉しいことです。