苺の開発

宇都宮に勤めて以来、苺はとちおとめを買うことにしています。以前はパックの底部に赤くない実を詰めたりすることがありましたが、この頃はそういうこともなく、平均して美味しい。苺は絶えず品種改良される宿命にあるようで(同品種を長期間同じ畑に植えておくと、病害が発生しやすいのだそう)、それぞれにお国自慢の銘柄があります。

福岡の親族に贈答用の苺を送る時、宇都宮の果物屋に、あっちにも苺の名品(とよのか)があるから、笑われないようにね、と念を押したら、「まかしとけ!」と言われました。幼稚園経営の叔母に送った時は、桜桃のように2粒つながった種類や、蔕が翼のように広がった品種を選んで、子供たちに喜ばれました。

石垣苺が開発されて、産地が県を挙げて売り込みを図っていた頃、父が全国物産展のレセプション(立食パーティだったらしい)で、その県の担当者と出会い、強力に宣伝されたことがあったそうです。初めは頷きながら聞いていた父が、しきりに酒を勧めた後、「大きな苺もいいんだけど、大きすぎるのもどうもね」と水を向けたところ、相手はぽろりと「そうなんですよ、何だかはんぺんのようで」と答えたとかで、爾来、我が家では異形の大きな苺を「はんぺん」と呼んでいました。

五輪で異国の苺に癒やされた運動選手たちには、弊国の苺を贈って、味わって貰ったらどうでしょうか。知的財産権だの逸失利益だのと国が騒ぐのは、大人げない。農家へ国際品種登録を啓蒙することは必要でしょうが。