医療現場の会話術

下枝みちよさんの『医療現場のおもてなし会話術』(秀和システム 2017)という本を読みました。「たった一声で評価アップ!」という角書がついています。著者の肩書がメディカルケアコーチとなっているので、調べてみたら、今はそういう名のついた活動が、あちこちで行われているらしい。

看護師・介護士・病院の職員などに向けた実用書でもあり、医療を受ける際に感じるさまざまな歯がゆさの原因を納得させてもくれる本です。著者が家族の看取りや自身の罹病体験から、医療現場にはもっとコミュニケーション能力が必要だと感じ、また現場の人々もその問題が解決できればハッピーになれるのではないかと考えて書いたとのこと。内容は①最初のお声がけ ②場面別・解決コトバ ③患者の不安を取り除く魔法のコトバ ④不意の事態に冷静に対応 ⑤素晴らしい医療スタッフとして認められるために という風の5つの章立てになっています。

そこには、例えば「患者になって初めて患者側の気持ちがわかるようでは、本当のプロフェッショナルとは言えません。あなたが患者自身になった時、どんな想いでいるでしょうか?あなたが患者の家族になった時、どんな気持ちになるでしょうか?あなたの家族が亡くなった時、どんな言葉をかけられたいですか?(中略)患者側の想いをきちんと受け止められる、素晴らしい皆さんでいてください。そして、受け止めていますということをきちんと相手に伝えられる「会話術」を身につけましょう」といったことが、1行ごとに行替え、というスタイルで書かれています。

繰り返しや不適切な説明(例えばp121「スタッフ自身の実体験」開示は、患者側からは、同じ体験をした人への信頼が湧く、とすべき)もありますが、忙しい職場で鬱になる前に、一読すれば役に立つノウハウが詰まっています。