新葉集の住吉歌群

君嶋亜紀さんの「『新葉集』の住吉歌群」(「国語と国文学」1月号)を読みました。住吉の松など、歌題としてはありふれたものだろうと読み始めたのですが、蒙を啓かれました。面白い。勅撰集にはもともと住吉関連歌群は多くないが、後嵯峨院期以降、大覚寺統の勅撰集には住吉歌群が形成され、住吉の沖に浮かぶ淡路島や八十島祭など国生みや即位儀礼に関係する,特異な政治性を感じさせる作品が含まれることを順を追って論じています。

殊に『太平記』巻30「住吉の松折るる事」とは対照的に、『新葉集』では、住吉行幸を寿ぐ歌が並べられていることの意味を指摘している箇所では、軍記物語と和歌文学の世界の違いがまざまざと浮かび上がり、膝を打つ思いでした。以前から、『太平記』と同時代の南朝歌集や、親房の『古今和歌集註』などを併せ論じたら有意義ではないかと考えていたので、研究者のジャンルを超えた共同研究の実現を、ぜひお奨めしたいと思います。

近年は、南朝歌集のすぐれた若手研究者が輩出しているようですので、機は熟していると思われます。やるなら、今です。