如意宝珠

藤巻和宏さんの『聖なる珠の物語ー空海・聖地・如意宝珠』(平凡社 ブックレット〈書物をひらく〉10)を読みました。国文学研究資料館が、国際共同研究ネットワーク構築プロジェクトの一環として助成している若手研究者の著作の1つらしい。藤巻さんはすでに著書や編著もあり、精力的に発信していて、もう若手とはいえないかもしれませんが、資料館の事業としては有意義なものです。

さて、一読・・・しようとして、読者対象としてどういうイメージを持っているのだろうか?と疑問を抱きました。p120くらいの、レイアウトも読みやすく工夫された本ですから、通勤の電車内でも一気に通読できる本を目指したのかなと思ったのですが、何しろ見慣れない人名、資料名、宗派名が続出。

しかし副題に見る通り、空海という人的存在、聖地という共同幻想、そして如意宝珠というシンボルに注目したからには面白い物語(ストーリー)が出来そう。いっそ副題を本題にして、思いきって切り口を変えてみてもよかったのでは。才気溢れた藤巻さんの、次作に期待したいと思います。宝珠については、たしか故美濃部重克さんも注目しておられた(書いたこともあったはず)と思います。

それにしても僧侶の世界では、知的な言葉遊びが流行ったのですね。漢字をばらして部品で代用させるとかーこれは速記のための技術の一種だったのでしょうか、それともただの洒落?