数値

複数の大手企業で検査の手抜きや数値の詐称が頻発し、「もの作り日本」のプライドをずたずたにしています。何故こんなことになったのか、何故永年続いてきたのか。異分野でも、疑問に思い、腹立たしく感じている人は多いのではないでしょうか。

恐らく最初は、自分たちは製品の性能を熟知している、数値はこのくらいまで切り下げても大丈夫、と勝手に判断してやっている内にそれが基準になってしまい、もともと何のために設定された数値だったのかが意識の外に飛んでしまう、時日が経つにつれ、今まで大丈夫だったのだから、となる―そういう経路は数値だけでなく制度の活用においても、いわゆる「要領のいい人」がいる所ではよく見られます。止めようとすると「そんなうるさいこと言わなくても」「頭硬いね」という眼で見られがちです。

数値や基準は、邪魔になるとき意味がある。もしどうしても不都合なら、数値だけをいじるのではなく、そもそも何のためにこの基準があるのか、何を心配して設けられたのかまで遡ることが必須です。そして目前の不都合だけでなく最初の心配をもひっくるめて解決できる新基準を、探さなければなりません。

最近はコンプライアンスという語が流行って、新人研修のカリキュラムにもそう載っていますが、具体的に、目の前で起こることを想定した言葉で、守るべきこと、日常の注意点を説明しているのでしょうか。単なる道徳や、法律用語の羅列ではなく。まずは「現場の心得」みたいな言葉で、守るべき事が何故そう決められているのかを説明してみれば、ベテランも、身体のどこかの紐を締め直す気になりはしないかと思います。